「地球の環境が変化する」とか「環境の汚染」とは最近よく話題になることです.
環境「変化」は必ず何かとの「比較」に基づいて議論されなければなりません.
比較の対象となるべき人の手の加わらない「本来」の地球はどのようなシステム
で成り立っているのでしょう.生物の住んでいる地球の歴史を二つに分類すると
氷河の存在する「氷室地球モード」と氷河のない「温室地球モード」に分けられ
ます.白亜紀の時代は,壮大なる温室地球の実験だったと言えるでしょう.最も
恐竜が栄えた時代であり,温暖化と海水準上昇が極度に進行した時代です.現在
の地球とは逆に,二酸化炭素を地球表層から除去し続け,化石燃料の根源物質を
蓄えた時代でもあります.その姿は現在危惧されている地球温暖化のなれの果て
であったでしょう.現在の地球「氷室地球」の研究だけでは見えてこない,誰も
知らない地球の特徴が,白亜紀研究から見えてくる場合があります.私は白亜紀
という時代にこだわりたいと思います.
生物が環境変化に重要な役割を果たしてきたという観点から,生物と環境の相互
作用の理解に努めています.生命が進化しながら地球環境に影響を及ぼし,地球
環境を独特なものに変えていく様子を「生命と地球の共進化」と表現する研究者
もいますが,まさに私たちが知りたいことを言い表した言葉だと思っています.
Over the geological history of the earth, the earth’s climate are categorised into two modes: the Greenhouse and the Icehouse. The Cretaceous was the period with a relatively warm climate, high eustatic sea levels and dinosaurs dominated on lands. Our world may well be similar to the world of the Cretaceous, if global warming proceeds at its current rate. What will be happened in the end of the global warming? Research of the Cretaceous world has a potential to find answers that we do not know yet, and the answers may not be found only from research of the “Icehouse Earth”
過去の地球環境を復元することを目指
しています.地質調査(右図のようなルー
トマップを,クリノメーターという方位
磁針のついた簡単な計測器を用いて一人
でも作れるようになります)を行い,化
石や泥岩などの試料を採集することが研
究の第一ステップです.それを用いて有
機物や化石そのものを化学分析したり,
化石の組み合わせなどついて細かい検討
を重ねながら過去の地球の姿を明らかに
していきます.化石を研究したい諸君,
化石を集めましょう.「あなた」はその
化石にとって世界で初めて出会う人,第
一発見者です.過去への時間旅行のため
のあなただけの鍵なのです.
有機炭素分析を中心とした地球化学も応用します.地層中の有機物(石油や石
炭みたいなもの)は過去の生物の遺骸であり「化石」のもう一つの姿でもあります.
これを分析することによって過去の生物の生活環境を知ることができます.『古
生物』を見る目で有機物を研究したいのです.この手法では,目に見えない情報を,
最新の機械で解読していきます
.長谷川研究
室は,昨年度末に新しい装置を導入し,日本屈指の設備を持つ古環境研究室にアッ
プグレードしました.最新・最先端の装置を駆使して「過去からの暗号メッセージ」
を解読してみよう!
過去へ,未来へ.1億年ものスケールで時間旅行できるのは(自分で本気でし
ていると思えるのは)地質学者だけです.研究の本質は夢と知的好奇心の追及で
す.そこから出てくるものには社会に役立たない結果もあるでしょう.だけど,
ひょっとしたら,その結果を20年後に誰かが役立ててくれるかも知れない.そ
れを誰も否定できない!それでいいじゃないですか.やってる本人が「今,楽しい」
こと,それが研究で最も重要なのです.
長谷川研究室では,特に研究討論そして研究の総括・発表についてしっかりと
指導します.論理的な議論を踏まえて第三者にわかりやすく発表する,当たり前
のようですが,これができれば理学系出身として一人前です.長谷川研では過去
3 人の学部卒業生と2人の大学院前期修了生が発表優秀者として表彰されてきた
歴史があります.
We aim to reconstruct palaeoenvironment of the earth. We conduct geological fieldwork by using a variety of tools such as a compass, picks, measures and road cutters, and collect fossils and sedimentary rocks. This is the first step of our research.
Organic materials preserved in sediments derive from remains of organism, and these are called ‘invisible fossils’. Invisible fossils have some information about environment in which organism lives. Our laboratory applies geochemistry, especially organic carbon analysis, to the reconstruction of palaeoenvironment, and try to decode the message from the past by using leading-edge instruments.
We offer close and detailed guidance for students regarding review, discussion and presentation of their research in order to foster logical thinking which is essential for science.
Google Earthは2次元の世界でありながら,「地球を手玉に取るような快感」が地質学と共通する.
例えば…
|
ズームイン |
93.50Maの海底の数ミリ以下の微小環境を観察 |
|
ズームアウト |
当時の地球全体像が,10万年間という時間に絞り込んで,
いかに変遷するか-スクロールしてみる |
という具合である.
この感覚を,深海から陸域・大気までの立体空間へ拡大し,日単位から地球史にまで及ぶ様々な時間スケールを自在に操るような学生を育てたい.
自発的に問題を提起し,この能力を使いこなすレベルまで引き上げる教育を目指しています.
We try to foster student’s sense of research to think 3D conformation of the earth from the deep sea to the atmosphere, and further to think its time scale of days to the long history of the earth.
Our aim is to let students raise questions and further to develop the sense autonomously.